憲法学者鈴木安蔵の義兄にあたる鈴木武之介は、明治時代に水戸から小高に移り、林商会に就職した。この会社では薬品や酒を含めて手広く商品を取り扱い、郵便局をも営んでいた。武之介は薬剤師の免許を取得して薬局の部門を譲られ、その後代々、東日本大震災時まで小高で林薬局の看板を掲げてきた。
武之介が大正後期に建てた現存する主屋は接客を主として利用されてきた。建物が軒を並べる小高の市街地における間口の比較的狭い敷地を最大限に活かし、趣向を凝らして縦長に造られた庭を楽しむ、開放的な空間が作られている。
往時の商人の暮らし方を今日に伝える建物で、室内の多様な造作や壁、建具を含めてたいへん良好な状態で継承されている。